本の概要
タイトル:おもしろい人が無意識にしている 神雑談力
著者:中北朋宏
出版日:2023年9月
総評
最終評価:6.0点(10点満点)
読むべき人:雑談で笑いを作り、出世したい人
『神雑談力』では、元お笑い芸人の中北氏が著者ということもあり、お笑いを軸に話が進められています。『神雑談力』とは、「あなたと仕事をしたいと思わせる力」と定義されており、ビジネスにおける関係構築について、学ぶことができる本となっています。人との関係構築を、関係開始・関係継続・関係深耕の3つのフェーズに分け、各フェーズで身につけるべきスキルが解説されていました。
全体を通して、初対面の人とのちょっとした雑談へのアドバイスというより、会社内で雑談を通してどのように人間関係を上手く構築するかということがテーマになっていました。前半部分は、本当に雑談が苦手な人に対して、人間関係の考え方など有益な情報が詰まっています。後半は笑いの取り方、良好な人間関係を構築していく方法が書かれています。全体を踏まえ、この本を読むべき人は「雑談で笑いを作り、出世したい人」としています。雑談を無難に終わらせるのではなく、いかに笑いを取り、その後の人間関係に繋げていくか学びたい人にはとても良い本だと思いますので、ぜひご一読ください。
内容解説
本を読んで特に印象的だった部分を、簡単に紹介します。
破滅思考
この本では、「あなたのことを好きな人」や「あなたが大切だと思う人」ではなく、「あなたのことを嫌いな人」や「あなたが苦手だと思う人」に意識を奪われ、関係性を改善しようと時間を費やしてしまうような思考のことを『破滅思考』と定義されています。特にビジネスにおいては、当てはまる方も多いのではないでしょうか。苦手な人と業務を進めなければいけなくなったときは、「どうやって進めればいいだろうか」と不安になってしまいます。
中北氏は、「人生で出会う大半の人が、自分にとって必要のない人である」と言っています。苦手な上司や先輩であっても、異動や転職することで、いずれ顔も思い出せないくらいになるということです。
私自身も転職の経験がありますが、前職でいろいろと苦しめられた先輩と関わる機会は全く無くなりました。さすがに顔はまだ思い出せますが、嫌な思い出は薄れてきています。職場の人間関係で病んでしまいそうな人も、「人生で出会う大半の人が、自分にとって必要のない人である」という考えを持つことで、ほんの少しでも楽になることができるかもしれません。この考えを持つことができると、自分にとって必要な人との関係にフォーカスできるようになり、『破滅思考』とは無縁になります。
人の印象は6〜7秒で決まる
メラビアンの法則というものがあり、人は人の印象を判断するときに「視覚情報55%」「聴覚情報38%」「言語情報7%」の割合で判断しているそうです。この法則を基に、人の印象は見た目で決まると言われることが多いです。しかし、正しくは聴覚情報・言語情報も判断要素に含まれているので、中北氏は「視覚情報・聴覚情報・言語情報」3つの情報さえ自分でコントロールすることができれば自分の印象を簡単に操作することができると述べています。
また、初頭効果というものもあり、人は人の印象を判断する際に6〜7秒で判断をしているそうです。さらに、その判断は半年間持続するとのことです。つまり、初対面で第一印象が悪かった場合、半年間印象が悪いままの状態が持続してしまうということになります。ただ、逆に考えると最初の6〜7秒さえ頑張って良い印象を与えることができれば、しばらく良い印象のままでいてくれるということにもなります。滅多に会わない人であれば、それで良いのですが、同僚や上司など日頃から顔を合わせる機会が多い人は、いくら最初の印象が良くても、普段の業務での印象が大きく影響してしまいます。そこで中北氏は、「事柄ごとの最初の6〜7秒だけ頑張る」ことで、。良い印象を持続させることができると述べています。出社直後・打ち合わせ開始・帰社前の6〜7秒を頑張るということです。1日中、良い印象を与えるように意識するのは確かに現実的ではないかと思います。事柄ごとに、ちょっと頑張って笑顔を作りハキハキと挨拶をするだけで印象が良くなるのであれば、みなさんも実践できるのではないでしょうか。声を出しての挨拶が難しい場合は、会釈をするだけでも印象は変わるそうなので、ぜひ実践してみましょう。
自己開示レベルを合わせる
人間関係で人が他者を好きになる要因は4つあるそうです。①顔馴染み感、②同類感、③前のめり感、④主人公感です。 ①の顔馴染み感は、「自分自身のことを相手に知ってもらう」「相手のことを知る」ことで生まれます。自分のことを知ってもらうためには、自己開示が必要になるのですが、そこでのポイントが解説されていました。
それが「自己開示レベルを合わせる」ということです。例えば、相手が「初めまして、田中といいます。趣味は映画です。」という自己紹介に対して、「初めまして、鈴木といいます。僕の浮気で昨日離婚したんですよ。と返してしまうと、田中さんは気持ち悪さを感じてしまうということでした。この例は極端なものかもしれませんが、確かに日頃の会話の中でも、開示レベルに違和感を覚えてしまうシーンはあるのではないでしょうか。ほぼ初対面なので、そこまで踏み込んだ内容を言う/聞く人と会話をするのは、非常に疲れてしまいます。自分が話したいことを話すのではなく、相手はこのレベルのことなら話してくれそうだなということを考えて、レベルに合わせた話をすることで、スムーズなコミュニケーションに繋げられるのかもしれません。私には、まだ少しハードルが高いですが、覚えておきたいと思います。